診療科・部門

女性骨盤臓器脱診療センター


スタッフと専門領域

神波 大己
センター長
泌尿器科学
【兼任/泌尿器科学講座 教授】
近藤 英治
副センター長
【兼任/産科・婦人科 教授】

女性骨盤臓器脱診療センターの特徴

骨盤底の弛緩による骨盤臓器脱(Pelvic Organ Prolapse:POP)は、骨盤内臓器がそれに接する腟を伴って腟内あるいは腟外に膨隆あるいは脱出する病態をいい、排便・排尿・性機能を障害し高齢女性のQOLを損ねる疾患で、単に子宮の脱出のみならず、膀胱瘤、小腸瘤、直腸瘤、尿道過可動、会陰体損傷を呈する複雑な複合疾病です。近年、急速に進む高齢社会において、POPに対する各臓器の機能を重視した骨盤機能再建医療の需要が高まっていることから、2014年には腹腔鏡手術、2020年にはロボット支援下手術が保険適応となり、症状に合わせた適正な手技を選択することが可能となっています。

一方で、POPに対する治療については、これまで婦人科領域、泌尿器科領域で単独の治療が行われてきた経緯があることから、適切な術式選択や学問的な体系化がこれから進められていく領域です。このため、全国的に治療体制が整備されているとは言い難く、東京大学や山口大学等で女性骨盤センターによる総合的ケアの提供が始まっている一方で、地方においてはいまだ各科単独の治療による合併症に苦しむ患者が多く発生しており、総合的治療の提供体制の整備が求められる状況です。特に、九州ではいまだ総合的ケアを提供する大学病院もなく、熊本県内でも治療を行っている病院はあるものの、単独の科で実施しているケースが多く、当院が地域医療機関にて施術後の合併症治療のための患者受入を行う事例も多く発生しています。

熊本大学病院では、これまでPOPに対して婦人科と泌尿器科がそれぞれ個別に対応を行ってきましたが、その診断と治療には婦人科と泌尿器科の双方からのアプローチが望ましく、双方からの視点で症例を共有し検討することで、よりよい医療を患者に提供できることが期待されます。そこで、当院に「女性骨盤臓器脱診療センター」を創設いたします。九州地区の大学病院初となる「女性骨盤臓器脱診療センター」を当院に開設することで、POPに悩む患者への最適な治療の提供が可能となると共に、不足している女性骨盤臓器脱診療を専門とする医師の育成効果も見込まれます。


女性骨盤臓器脱診療センターの目的

  • 九州地区の大学病院初の婦人科及び泌尿器科合同の診療組織としてセンターを設置することにより、症状に苦しむ多くの患者に対し、より適切な医療を提供する。
  • 女性骨盤臓器脱診療領域における標準的治療の開発を行い、当該技術を地域医療へ還元することに加え、広く地域社会にPOPの啓発を行うことで高齢化社会における当該患者のQOLを向上させ、社会に貢献する。

業務内容

  1. POPに対する手術術式を含めた治療方針を検討及び決定し、必要に応じて両診療科の合同で手術を行う等、手術・術後の総合的ケア等をおこなう。
  2. 熊本県下の医療機関とPOP症例の情報共有を行うと共に、当該医療機関向けに研修会等の教育活動を実施する。
  3. ウロギネコロジーを専門とする医師及び専門的知識を持つ看護師等メディカルスタッフを育成する。
  4. 地域住民を対象としたPOPに関する情報提供・啓発(市民セミナー等)を実施する。
  5. 院内でPOP症例に関する情報共有を行う。(データベース化)
  6. POP分野について学問的に体系化する。

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