先進医療は、新しい医療技術の出現や医療に対するニーズの多様化に対応して、国が先進的な医療技術と一般の保険診療の併用を認める制度で、保険診療をベースとして、別に特別な料金を負担することにより、先進的な医療を受けやすくしようというものです。本院では現在、次の先進医療Aと先進医療Bの承認を受けています。
小児科(令和6.5.1承認)
適応症:ゴーシェ病患者のうち経口投与治療薬を投与される予定の患者
主な内容:ゴーシェ病は糖脂質代謝障害のため、グルコシルセラミドが種々の臓器に蓄積し、発症する極めて稀な先天性代謝異常症です。 現在、ゴーシェ病の治療薬としては、隔週に点滴静脈内投与する酵素補充療法が一般的ですが、最近、経口薬が承認されました。この経口薬は体内でCYP2D6によって分解・代謝されますが、このCYP2D6の働きには個人差があることが知られています。 CYP2D6の働きは、遺伝子多型を検査することによって推定することができますので、その結果によってその患者さんに適した投与量を決定します。経口投与治療薬の投与可否や投与量の判定が可能になることで、ゴーシェ病患者様のQOL(生活の質)向上に貢献することが期待されます。
消化器外科(平成30.3.30承認)
適応症:小腸腺がん(ステージがⅠ期、Ⅱ期又はⅢ期であって、肉眼による観察および病理学的見地から完全に切除したと判断されるものに限る。)
主な内容:この先進医療は、小腸腺がんの切除手術を受けた患者さんを対象に、カペシタビンという抗がん薬の内服投与と、同じく抗がん薬のオキサリプラチンの点滴による静脈内投与を併用する療法です。小腸腺がんは、小腸の内壁のすぐ内側にできたがんのことです。小腸腺がんは患者数が少ない希少がんであり、治療の選択肢が限られており、現在は、切除可能であれば単独の切除手術が標準治療とみなされています。そのため、切除手術後に行う治療法の開発が求められています。また、切除できない小腸腺がんにはカペシタビンとオキサリプラチンの併用療法が、すでに事実上の標準治療となっています。小腸腺がんの切除手術後に、服薬と点滴による抗がん薬の併用療法を加えることで、再発を抑えて延命効果を高めることが期待されます。
小児科(令和6年4月1日承認)
適応症:成人T細胞白血病(末梢血幹細胞の非血縁者間移植が行われたものに限る。)
主な内容:この先進医療は、シクロホスファミドという抗がん薬を免疫抑制薬として静脈内に投与する治療法です。対象となるのは20歳以上65歳以下の、急性型またはリンパ腫型ATLの患者様で、血縁者に適切なドナー候補の方がおらず、骨髄バンクのドナーから非血縁者間末梢血幹細胞移植を受ける意思をお持ちの方が対象です。 本治療法により、移植片対宿主反応(合併症)をコントロールすることが可能になります。 この先進医療によって、成人T細胞白血病の非血縁ドナーよる末梢血幹細胞移植後の合併症が予防され、移植治療の安全性が高まることが期待されます。
小児外科・移植外科(令和4年9月1日承認)
適応症:切除が不可能な肝門部胆管がん
主な内容:手術によるがんの切除が不可能と診断された肝門部領域胆管癌の患者さんで、診断後5年間生存される 方の割合は、10%未満に留まっています。近年、欧米を中心に、このような患者さんに対して「肝移植」を行うことで、飛躍的に治療成績が向上 したことが報告されており、米国では、通常の肝移植適応のひとつとして認められております。 一方、我が国は生体肝移植の安全性を世界に先駆けて確立し、さまざまな末期肝不全の患者さんに対し 年間約400件の肝移植が保険診療の下で施行されていますが、悪性腫瘍(がん)に対する肝移植は肝細 胞癌と肝芽腫のみが保険適用であり、その他の肝胆道領域のがん患者さんは保険診療の対象となっておりません。 この先進医療は、切除不能な肝門部領域胆管癌の患者さんに対し、生体肝移植を施行し、安全性の確認、 有効性の評価、妥当性の検討を行って将来的に保険適用を拡大することを目的としております。
小児外科・移植外科(令和5年11月1日承認)
適応症:切除が不可能な肝門部胆管がん(大腸がんから転移したものであって、大腸切除後の患者に係るものに限る。)
主な内容:大腸癌肝転移に対して治癒の可能性がある唯一の治療法は肝切除ですが、残念ながら診断時に切除不能 と判断される症例も多くあります。このような症例のうち、転移をしている臓器が肝臓のみである患者さんにおいては、肝臓を全て取り出して、健康な人(ご家族に限られます)からご提供いただいた肝臓の一 部を移植する、生体肝移植により根治できる可能性があります。この先進医療は、切除不能な大腸癌肝転移を来した患者さんに対し、生体肝移植を施行し、安全性の確 認、有効性の評価、妥当性の検討を行って将来的に保険適用を拡大することを目的としております。