病院について

特色と取り組み/循環器内科

【冠動脈疾患に対するカテーテル治療】

 当院では、最新のアンギオ装置(血管造影装置)を使用し、狭心症や心筋梗塞に対する冠動脈インターベンション治療※1を行っています。通常の治療に加え、再狭窄を起こしたステント(金属製の筒状の網)に対するエキシマレーザー治療(光照射)や、高度な石灰化が見られる病変に対するロータブレーター治療※2を積極的に実施しています。さらに、慢性完全閉塞病変では、側副血行路を利用したレトログレードアプローチ※3を行い、難治性の病変に対しても高い治療成功率を誇っています。

 また、重症の三枝病変※4では、IMPELLAと呼ばれる補助循環デバイスを併用し、安全性を確保しながら治療を行っています。2023年からは、石灰化した血管を衝撃波で拡張しやすくするIVL(Intravascular Lithotripsy)治療も導入し、従来の治療が難しかった症例にも対応できるようになりました。これにより、より多くの患者さんに適した治療を提供することが可能になっています。

※1=カテーテルと呼ばれる細い管を皮膚に開けた小さな穴から血管に挿入し、病気を治療する手法
※2=冠動脈の狭窄病変を削るカテーテル治療
※3=側副血行路から逆行性にガイワイヤーを通過させるテクニック
※4=右冠動脈、左前下行枝、回旋枝すべてに狭窄(狭くなること)がある状態


【不整脈に対する治療】

 当院では、年間400例以上のカテーテルアブレーション治療を実施しており、国内有数のハイボリュームセンターとして多くの患者さんを受け入れています。火曜日と木曜日の施術枠に加えて、一部の曜日で手術枠を増やし、より多くの患者さんが治療を受けられるように体制を強化しています。頻脈性心房細動や心室性不整脈など、緊急を要する不整脈にも迅速に対応しています。当院は、国内でも数少ないすべての三次元マッピングシステム(EnSite、CARTO、Rhythmia)を完備しており、それぞれの特徴を活かしながら、より正確で安全なアブレーション治療を提供しています。

 また、ICD(植込み型除細動器)やCRTD(両心室ペースメーカー)などのデバイス治療にも力を入れており、年間60件以上の手術を行っています。リード抜去などの高難度な手術にも対応しており、不整脈診療の分野で全国トップクラスの実績を誇っています。

 


【構造心疾患に対するカテーテル治療】

 近年、狭心症や心筋梗塞だけでなく、心臓弁膜症や心房細動関連疾患に対するカテーテル治療(SHDインターベンション※5)の重要性が高まっています。当院では、TAVI(経皮的大動脈弁留置術)を導入し、重症の大動脈弁狭窄症に対する低侵襲治療を提供しています。この治療法では、開胸手術を行わずに生体弁を留置できるため、手術の負担を大幅に軽減できます。局所麻酔で約1時間の手技で行うことが可能で、術後の回復も早いのが特徴です。当院では、2023年度までに350件を超えるTAVIを実施しており、多くの患者さんの治療に貢献してきました。

 また、MitraClip®(経皮的僧帽弁尖接合術)を用いた治療では、開胸手術を行わずに僧帽弁逆流症の改善が可能です。心不全の再入院や死亡率を低下させることが報告されており、高齢の患者さんや外科手術が困難な方にも適用可能な治療法です。当院では、循環器内科、心臓血管外科、麻酔科、放射線科、看護師、臨床工学技士などの専門チームが連携し、それぞれの患者さんにとって最適な治療を提供できるよう努めています。

※5=心臓の構造異常に対するカテーテル治療


【心不全に対する治療】

 心不全は進行すると、息切れやむくみがひどくなり、日常生活に支障をきたす病気です。当院では、通常の治療だけでなく、心臓移植や左室補助人工心臓(LVAD)を用いた治療にも対応しています。九州大学と連携し、移植を必要とする患者さんが適切なタイミングで治療を受けられるようにサポートを行っています。また、より精密な診断を行うために、心筋生検を積極的に実施し、患者さんごとに最適な治療を進めています。

 また、心原性ショックの治療として、IMPELLAという補助循環デバイスを用いた治療を行っています。このデバイスは、大腿動脈から挿入したカテーテルで心臓の血流を補助し、心臓の負担を軽減するものです。急性心筋梗塞や劇症型心筋炎など、心機能が急激に低下した患者さんに対して有効な治療法として、当院でも積極的に活用しています。


【心アミロイドーシスに対する治療】

 心アミロイドーシスは、アミロイドという異常なタンパク質が心臓に蓄積し、心不全や不整脈を引き起こす病気です。当院は、心アミロイドーシス診療の専門施設として認定されており、最新の治療を提供しています。2019年に承認されたタファミジス(ビンダケル)は、アミロイドの沈着を抑制する薬剤で、病気の進行を遅らせることが期待されています。当院では、この薬の処方数が国内有数であり、全国的にも高い水準の診療を提供しています。


【慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)に対する治療】

 肺高血圧症は、心臓から肺に血液を送る肺動脈の圧が上昇し、心臓や肺に負担がかかる病気です。当院では、CTEPHに対する最新の治療法として、BPA(バルーン肺動脈形成術)を2018年に導入しました。BPAは、カテーテルを用いて肺動脈の狭窄部分を広げる治療法で、低侵襲でありながら大きな治療効果が期待できます。全国的にもまだ数が多くないBPAの実施医が在籍している施設であり、専門的な治療を提供しています。 この治療により、運動時の息切れの改善や予後の向上が見込まれます。今後も治療成績の向上を目指し、患者さんに最適な医療を提供できるよう努めてまいります。


〈この記事は2025年3月1日時点の情報です〉

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